研究概要 |
本年度は,前年度に試作した双方向反射率分布関数計測システムの問題点を洗い出し,ハードウェアとソフトウェアの両方の改良によって完成度を高めた. まず,ハードウェアの改良として,計測装置全体を再設計した.前年度の試作システムでは,計測対象の試料を切り取る必要があるため用途が限られる問題と,試料の法線方向の反射光が観測できないという問題があった.そこで,楕円鏡の形状を変更し,試料の配置方法を変えることで,これらの問題を解決した.さらに,バッテリ動作が可能なLED方式のプロジェクタを用いることで,可搬性のあるシステムとした. 次に,ソフトウェアの改良として,照明の多重化によってS/N比を向上させた.提案装置では,鏡面反射と拡散反射を同時に一台のカメラで撮影する必要があるが,両反射成分の強度差は極めて大きい.そのため,鏡面反射を飽和せずに撮影すると,拡散反射がノイズに埋もれてしまう問題があった.そこで,プロジェクタから投影する照明パターンを多重化することで,カメラのダイナミックレンジの問題を軽減した.これにより,主に拡散反射成分のノイズが大幅に減少し,高精度な反射率計測が実現できた. 以上の改良を施した計測装置を用いて,当初の研究計画通り,布や金属などの様々な材質の反射特性を計測し,BRDFデータを収集した.
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