研究概要 |
本研究は,ネットワークの構造特性と人間の限定合理性に基づく振舞いから情報の価値・関連度を推定する理論を構築し,情報推奨システムへの適用を通して実証することを目的とする.情報過多時代を迎えつつある現在,新たな情報システムの動作メカニズム実現をめざし,本年度は以下の基礎的課題について研究を行った. 1.成長する複雑ネットワークの一般化理論モデルの構築 様々なネットワーク構造の普遍的性質を追究することを目的に,包括的に構造生成が可能なモデルを提案し,ネットワーク構造生成と構造の遷移過程について議論を行った.本提案モデルは,既存の複雑ネットワークモデルを組み合わせ,一定ノード数,一定リンク数のもとリンクをつなぎ替えることによってネットワークを生成する.このとき,リンクのつなぎ替え確率とその試行回数という二つのパラメータによって,スケールフリーネットワーク,スモールワールドネットワーク,ランダムネットワークなどの異なる特徴的な構造を持つネットワークが生成されることが示された.また,制御パラメータを軸とした平面上にパラメータ値の網羅的探索結果からネットワークの構造生成遷移マップを作り,ネットワーク構造間の関係を明らかにした.この研究成果は,情報処理学会論文誌や国際学会での発表に結実している. 2.インターネット,www等の情報ネットワークに関する構造特性調査 近年急速な普及が著しいブログを取り上げ,その情報伝播ダイナミクスを解析した.Webクローラーシステムを開発することで,現実の情報伝播プロセスの実データを収集し,ネットワークトポロジ解析装置による情報伝播様の分析を行っている.その結果,ブログユーザの膨大な局所的行為から,大局的にはベキ法則が成立していることが明らかになった.
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