本研究の目的は、アーカイブズ(記録史料)の検索手段(目録)電子化のデファクト国際規格EADに則って構築された日本の記録史料のEADデータに対し利用者が自由に検索できるシステムの研究・開発、にある。研究目標として、A.EADによる検索システムの構成の把握、B.日本でのEADによる検索システムのための必要条件の解明、C.本のEADデータの実例の豊富化、の3つを掲げ、本年度は主としてBとCにっいての研究を実施した。 Bでは、AのEADデータ構成とCの実例との差異を把握した。基本的に、EADで必須の資料群(fonds)レベルのデータがないか、必須ではない1点ないし1件(item)のレベルのデータのほうが多い、という予想通りの違いを得た。日本のitemレベルデータは、その作成の現実から各要素の区切りや標準化記載においてEADに厳密な符号化ができず、汎用的EAD要素で包含し、一部の標準化形式外のデータを破棄して符号化した。これを前提して、データ作成の改善のためEADデータ構築用の既存公開データベースを拡張し、標準化記載に困難のある年代データについて範囲検索機能を追加した。海外とのデータ共有・交換に関しては、国際的アーカイブズ横断的検索サービスを提供していたRLGがOCLCへ合併されたことの影響、米国国立公文書館等の状況を調査した。最低限の英文化データの必要を再確認し、本研究とは別の費用により国文学研究資料館所蔵歴史資料の一部の標題・概要等の翻訳が実現した。 Cでは、引き続き国文学研究資料館所蔵資料の目録により事例を蓄積し、核融合科学研究所アーカイブ室所蔵資料データの一部をEAD化した。他に江川文庫所蔵資料の目録データEAD化にも関与したため(擬似的)横断検索による検索動作を確認できた。東アジア近代史学会、日本アーカイブズ学会等での口頭発表等によりシステム普及にも努めた。
|