研究概要 |
1000を越える極め多くの確率変数の依存関係を表すグラフィカルモデルの推定問題を中心に前年度の研究をさらに発展させた.特に,ベイジアンネットワークに基づき推定した遺伝子ネットワークを用いた発展的研究や遺伝子ネットワークを推定するためのゲノムデータの統合手法について研究を行った.また,新たに,シミュレーションモデルと観測データを利用し生命システムネットワークを明らかにするための方法としてデータ同化技術のための基礎的研究を開始した. 以下に本年度に行った研究の主なものをまとめる: [1]推定した遺伝子ネットワークと薬剤応答のマイクロアレイデータを用いて,新たな投薬標的遺伝子を発見するための情報科学的手法について研究した.その有効性については出芽酵母のマイクロアレイデータを用いることで実証した. [2]データベースに登録されている情報を計測データと共に遺伝子ネットワーク推定に用いるための統計モデルについて研究を行った.提案手法は,データベース情報には誤りがあり,また多くの情報が欠損していることを前提とした方法であり,データベース情報を修復しながら遺伝子ネットワークを推定することにその特徴がある. [3]前年度行った超高次元データのクラスタリング手法であるMixed Factors Analysisを実装し,フリーのソフトとして公開した. [4]研究代表者の所属する研究室ではCell Illustrator (CI)という細胞内ネットワークシミュレーションのためのソフトウェアを開発している.CIには多数のパラメータが存在するため,これまではエキスパートによるハンドチューニングによりシミュレーションモデルは構築されてきた.そこで,データ同化技術を応用し,マイクロアレイデータやプロテオミクスデータを用い,自動的にCIのパラメータを推定できる枠組みを開発した.
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