研究概要 |
階層化されたアドレスを指定することで,アドレスに対応したデータを取り出すことのできるDNAメモリとして,DNAの増幅を段階的に行うNested PCRを利用したアドレッシング方法に基づくNested Primer Molecular Memory(以下,NPMMと呼ぶ)を提案している.このNPMMを用いて,秘密情報をDNAの塩基配列の形でコードし,セキュリティの高い情報伝達媒体としての利用を提案した.各アドレスはそれぞれ独立しているため,分散鍵としての役割を果たす. 本年度は,1万アドレスを持つNPMMの作成,及び,化学反応の条件を考慮したNPMMの容量限界についての考察を主に行った.それぞれの成果の概要は以下の通りである. 4階層10配列のNPMMを構築するために,Parallel Overlapping Assembly (POA)法に基づく作成方法を採用し実際に作成した.1万のアドレス空間を持つNPMMを構築し,そのうち16個のアドレスに対応するデータとしてデータ0を格納し,残りにはデータ1を格納する.データ0とデータ1を表すDNAの長さを変えることでNested PCR後に電気泳動によってどちらのデータが読み出されたかを検出することとした.ランダムな操作ではより取り出しにくいと思われるデータ0を格納したアドレスを2種類,データ1を格納したアドレスを3種類についてNested PCRによるアドレッシングを行って,正しいデータ長が検出できた. さらなるセキュリティの向上に向けたNPMMの大容量化の検討のために,NPMMのアドレッシングの化学反応における種々の条件を考慮して,容量の最大化を試みるために,最適化問題への定式化を行い,分析を行った.その結果,数Gクラスのアドレス空間が,現在の枠組みとしての限界であることがわかった.また,データの両側にアドレス部を持つモデルの方が,より容量を大きくできる可能性があることがわかった.
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