研究概要 |
階層化されたアドレスを指定することで,アドレスに対応したデータを取り出すことのできるDNAメモリとして,DNAの増幅を段階的に行うNested PCRを利用したアドレッシング方法に基づくNested Primer Molecular Memory(以下,NPMMと呼ぶ)を提案している.このNPMMを用いて,秘密情報をDNAの塩基配列の形でコードし,セキュリティの高い情報伝達媒体としての利用を提案した.各アドレスはそれぞれ独立しているため,分散鍵としての役割を果たす. 本年度は,3階層両側16配列(約16.8M)のNPMMの構築とアドレッシングに成功した.本研究において,徐々にスケールアップを進める上で,実験の作業手順を明確にし,クリティカルパスを見出して,効率的に実験を進める必要性があったため,実際に必要となる実験作業と実施順序,日程を整理し最終的に約16.8Mのアドレス空間をもつNPMMの構築に至った. 3階層で両側16配列のアドレス部分のDNA配列として96本,及び,各アドレス部をつなぐためのリンカ部の配列として6本,データ部として長さがそれぞれ,20,40,60のデータdata20,data40,data60の3本,の計105本の一本鎖DNAは,配列同士がミスハイブリダイゼーションを起こさないように正規直交配列となるように設計を行った.設計手法は,本研究の成果でもある2 step searchを用いた.16.8Mのアドレス空間のうち,ただ一つのアドレスにdata40を,もう一つのアドレスにdata60を埋め込み,すべてのアドレスにはdata20を埋め込んで,実際にアドレッシングの実験を行った.16のアドレスをサンプリングして,アドレッシングを行った結果,適切にある特定のアドレスのみdata20とdata40が,そして,もう一つのアドレスのみdata20とdata60が取り出せることを示した.
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