研究概要 |
本研究では,経験的に行われている品種改良技術(交雑育種)の効率化に着目した.育種学では,花粉の形態から,その花粉の生殖可能の有無を判断できるだけでなく,花粉の親種の特徴などもある程度判別が可能とされている.しかし「育種学」では,花粉の形状を定量的に評価することはほとんど行なわれていない.このことから,この分野では,研究者の観察的かつ感覚的な評価がなされてきた.これまで申請者は,形状モデルで表現できないような複雑な物体,粒子群の密集パターンなどを定量的に表現する方法について研究してきた.本研究では,これまで得た知見を適用し,花粉の「形状」,「模様」,そして「色彩」を定量的な指標で表わすことによって,指標と花粉との遺伝的な関係を調査してきた.これまで,ある種類の植物に関しては遺伝的な特徴の把握が可能であることを確認している. 本年度のおいては,これらの指標を算出する方法を計算機に実装した.これによって,画像中にある任意の花粉を指示することによって,その花粉の形状,模様,色彩に関する指標を算出することを可能とした.ただし,入力の画像としては,(1)1600×1200以上の高解像度を有すこと,(2)色彩表現の分解能が高いこと,が不可欠である.また,なるべく注視している花粉を大きく映せるように,(3)連続的に可変な高倍率レンズが装備されていることが望ましい.以上の要求を満たす機器として,現有の顕微鏡にある自動XYステージ上に付加することが可能なマイクロスコープを選定した.これを利用して,画像から花粉解析に有用な指標を算出する装置の基本部を開発した. 本年度においては,すでに提案した花粉解析のため形状,模様,色彩の指標算出法を計算機に実装し,さらに,解析に有用な画像を撮像するためのマイクロスコープを増設した.これによって,画像自動計測システムの基本部を作成することができた.
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