3年間にわたる第二年度の研究として、(A)大脳基底核の情報処理の解明/モデル化の基礎となる強化学習という数理理論の枠組の発展、そして(B)大脳基底核の機能と、情動・感情・動機・報酬獲得などの機能との関係の明確化、を目指して研究を進めた。(A)では数理的枠組の整理が主となる一方、(B)では神経生理学者と多岐にわたる議論を通じて問題の明確化が進められた。簡潔には、(A)の数理理論を発展させつつ、辺縁系を含んだ大脳基底核回路という生物の脳での実際の情報処理との対応を探るという作業を進めた。本年度は、実は、本研究者が自らの研究室を独立して運営を始めた初年度と重なり、それにまつわる諸業務に忙殺されることが多い中での研究推進と相成った。その中でも、特に(A)において、基底核などの実験データの解析に直接役立てることができる計算論的モデルの研究、--このモデルによって眼球運動潜時と大脳基底核や大脳皮質の神経細胞活動を関連づけることができる--、を論文発表することができた。また、基底核の主要な出力先である上丘における神経活動ダイナミクスに関する研究--この研究によって大脳基底核や大脳皮質の主要な出力先の神経細胞の活動を実際の眼球運動との関連付け行う基礎が得られる--を推進し、これも論文発表することができた。これらの研究をもとにして、上述した議論を深めつつ、来年度への成果につなげていきたいと考えている。最後に、本研究は、申請者一人が推進する研究であり、本研究費によって、諸処の数理計算用のハード/ソフトの諸費用、マンパワーとしての研究補助などが得られていて、非常に有効に機能していることを述べておきたい。
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