由来不明の細胞を含む脳腫瘍であるpapillary glioneuronal tumorにおいてOlig2の発現を検討したところ、従来より知られていたニューロン及びアストロサイトの成分とは別に、特異な分布を示すOlig2陽性細胞の存在を明らかにした。Oligodendrocyte-like cell(OLC)出現を特徴とするdysembryoplastic neuroepithelial tumorにおいてもOLCが選択的にOlig2を発現していることを明らかにした。いずれもglioneuronal tumorと称されるグリアとニューロンの両方の成分を有する腫瘍であり、今まで見逃されていたオリゴデンドロサイト成分を描出する上で我々の抗Olig2抗体が有用であることが示唆された。またCreutzfeldt-Jakob病(CJD)は著明なニューロンの脱落を示す疾患で、ニューロンの軸索に巻き付いたオリゴデンドロサイトにも当然影響はあるはずであるが、我々はOlig2の発現を指標にオリゴデンドロサイトの数を検討したところ、CJDにおいてはオリゴデンドロサイトが数的に保存されていることを明らかにした。胎生期におけるOlig2の発現は齧歯類やニワトリでの研究は多いが、我々はそれがヒトにおいても同様に見られることを示し、また細胞系譜を追跡する上での有用性を明らかにした。
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