研究概要 |
従来より細胞内物質輸送は細胞機能の発現に非常に重要であると考えられてきた。近年、我々の細胞内物質輸送に関する研究成果は、物質輸送を行うモーター蛋白質もしくはその複合体の進行方向が、レールの役割を果たす微小管を構成するチュブリンの翻訳後修飾により定められるという可能性を示唆してきた。本研究で我々はチュブリン翻訳後修飾反応の一つpolyglutamylationに注目した。polyglutamylationとはチュブリンのC末端にグルタミン酸を付加する反応である。我々はその酵素であるpolyglutamylaseの同定を試み、TTLL遺伝子ファミリーのうちTTLL7が、チュブリンサブユニットであるβチュブリンに対して特異的にグルタミン酸付加反応を行うこと、そしてβチュブリンのpolyglutamylationが神経突起成長に必要であることを明らかにした(Ikegami et al., JBC, 2007)。また、αチュブリンに対してグルタミン酸付加反応を行うとされていた複合体のうちPGs1が機能低下したROSA22ミュータントマウスを解析することにより、αチュブリンのpolyglutamylationがKIF1キネシンモーター蛋白質の方向性を制御する分子標識の役割を果たすことを明らかにした(Ikegami et al., PNAS, 2007)。以上のような本研究により得られた成果は、これまで不明であった細胞内物質輸送の制御メカニズムの解明に大きな発展をもたらし、さらには細胞間における情報伝達異常により引き起こされることが知られているアルツハイマー病などの脳神経疾患を治療するための新たなターゲットになりうる可能性を示唆した。
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