研究概要 |
本研究計画は、グルタミン酸放出能を規定する分子本体であるVGLUTの3つのイソ型に焦点を当て、グルタミン酸作動性ニューロンの分子多様性と、その生理学的意義の解明を目指して企画された。以下に、平成17年度の主要な研究成果を挙げる。 (1)三量体G蛋白質によるVGLUT活性の制御:VGLUT活性は塩素イオン濃度が数mM時に最大活性を示すが、その詳細な制御機構は不明である。我々は、複数のGα欠損マウス(Gαo1,Gαo2,Gαq, Gα11)を解析し、Gαo2欠損シナプス小胞では、塩素イオンによるVGLUT制御機構が欠落していることを見いだした。この結果は、グルタミン酸の小胞輸送活性を制御する新しい分子機構を提唱し、J.Neurosci誌の"In the current issue"欄に、注目論文として掲載された。 (2)VGLUT1特異的結合蛋白質の性状解析:VGLUTイソ型特異的な機能を示唆するVGLUT1のC末端をbaitとしたyeast two hybrid screeningによりエンドフィリン1(Endo1)を得た。本年度は、VGLUT1とEndo1の結合部位の特定及びイソ型特異性を解析した。また、海馬培養細胞では、Endo1はVGLUT1陽性グルタミン酸シナプスのみに特異的に存在することを発見した(未発表)。 (3)VGLUT1欠損シナプス小胞画分を用いたグルタミン酸取込機構の解析:VGLUTを介したグルタミン酸輸送の詳細なメカニズムは不明である。本研究では、VGLUT1欠損マウスから得られたシナプス小胞を用いて、そのグルタミン酸輸送活性及び内腔酸性化活性を調べた。VGLUT1欠損小胞画分では、グルタミン輸送活性のみならず、塩素イオンによる内腔酸性化活性も顕著に減少している。VGLUT蛋白自身が塩素イオン透過活性を有する可能性が示唆された(未発表)。
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