研究概要 |
グルタミン酸は哺乳類中枢神経系における主要な興奮性神経伝達物質である。申請者は、ニューロンのグルタミン酸放出能を規定するタンパク質であるシナプス小胞型グルタミン酸トランスポーター(VGLUT)の3つのイソ型を同定した。興味深いことに、哺乳類中枢神経系のグルタミン酸作動性ニューロンはVGLUTイソ型を使い分けている。本研究は、VGLUTに焦点をあて、グルタミン酸作動性ニューロンの分子多様性とその生理学的意義の解明を目指す。 【研究成果】(1)VGLUT1-Endophilin A1(Endo1)相互作用の解析:VGLUT1とEndo1の相互作用をBiocoreで解析した結果、VGLUT1 1分子に二つのEndo1がホモダイマーとして結合すること、VGLUT1-Endo1複合体には、エンドサイトーシスに必須なdynaminが結合しうること等を発見した(未発表)。(2)VGLUTイソ型の発達依存的共存:成体脳ではVGLUTイソ型はほぼ完全に相補的に発現しており、異なるVGLUTイソ型の共存は例外的である。今回、幼齢マウスの海馬、特に海馬苔状線維において、VGLUT1とVGLUT2が同一のシナプス終末、同一シナプス小胞上に共存することを発見した(Herzog et al., J.Neurochem誌)。(3)シナプス小胞上のVGLUT定量:シナプス小胞膜上のVGLUT発現量がグルタミン酸放出量を規定している可能性を提唱してきた(Takamori, Neurosci Res誌)。本項目では、1シナプス小胞の三次元分子モデル構築の一環として、1小胞上のVGLUTの数を試算したところ、約10-15個/小胞であった。また、成体脳から精製したシナプス小胞の約60%がVGLUT1陽性、約20%がVGLUT2陽性であった(Takamori et al., Cell誌)。
|