研究概要 |
昨年度から構築を行なっている3次元並列型画像処理ライブラリをCT像やCT像から抽出した血管領域画像などの実画像に適用し,基礎的な性質の調査を行なった.その結果,とくにPCクラスタを用いた場合,データ量が多い画像を処理する際に画像転送に要する時間が計算時間を上回る状況が見られることが確認された.そこで,マスターノードから計算ノードヘ,および計算ノードからマスターノードへ画像を転送する際に圧縮を行なう手法を実装した.さらに画像を圧縮した場合と圧縮しない場合のそれぞれに対して,使用するCPUの数を変えながら画像転送に要する時間を計測した.なお,画像を圧縮する場合には,画像転送に要する時間に画像の圧縮・解凍に要する時間を含む.その結果,2値画像に対してはCPU数が3個以上の時,画像を圧縮することにより,転送に要する時間を1/7〜1/12程度に削減できることが確認された.一方,濃淡画像に対しては,画像を圧縮しても転送時間の削減にさほどの効果がなく,計算ノードからマスターノードに画像を転送する際には,圧縮することにより転送に要する時間が,圧縮しない場合の2倍程度かかることが確認された.このことは,2値画像が原画像のデータ量の1/10程度まで圧縮されうるのに対して,濃淡画像ではたかだか1/2程度にしか圧縮できないことに起因する.以上のことより,処理対象の画像に応じて圧縮の有無を決定して転送する必要があることが確認された. また,構築した3次元並列型画像処理ライブラリを用いて,胸部CT像に対する医用画像診断システムの構築を始めた.本システムはパラメータの値の決定時や大量の画像を処理する際などは大規模計算環境の一部として動作し,それ以外の場合にはノート型PC1台でも動作するという特徴を持つ.
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