研究概要 |
今年度実施した本研究の内容を大別し,以下に報告する。 1.変形性関節症症例における体性感覚-運動連関機能 変形性股関節症と診断され人工股関節置換術あるいは寛骨臼回転骨切術を施行された症例を対象に,術前から術後6ヶ月までの間の体性感覚-運動連関機能評価として運動平衡保持課題(K-E課題)を用いた検査を実施し,その術後回復を解析した。K-E課題の実施成績は,昨年度までの検討で決定した変数である,位置絶対誤差,位置誤差標準偏差,力絶対誤差,力誤差標準偏差によって評価した.術前,術後3週,術後3ヶ月,術後6ヶ月の各時期に検査し,これらの時期を要因として統計学的に分析した。その結果,術前および術後3週と比較して,術後6ヶ月における成績が明らかに向上していた。このことから,今回対象とした変形性股関節症症例においては,術後6ケ月になると,それ以前と比較して有意に体性感覚-運動連関機能が改善もしくは向上することが明らかとなった。 2.運動経験の体性感覚-運動連関機能への影響 大学生スポーツ選手(運動群)と,特に体育会運動部に所属しない一般大学生(一般群)を対象に,既存の運動感覚機能評価およびK-E課題の実施成績を比較した。その結果,既存の評価方法による運動閾値および筋出力安定性検査の成績が運動群で優れていた。また,K-E課題による検査では運動群が一般群と比較して,位置絶対誤差と位置誤差標準偏差に関して有意に優れていた。これらのことから,長期間の運動経験は運動感覚および筋出力の安定性向上を伴い,その結果としてK-E課題で検査される体性感覚-運動連関機能が向上するものと推察した。
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