本実験では、運動後の自律神経系活動動態と夜間睡眠との関連性を明らかにするため、運動終了後に交感神経系から副交感神経系へ速やかにシフトさせた場合と計算課題によってシフトを抑制した場合に、体温や眠気、夜間睡眠にどのような影響が及ぼされるかについて実験研究を行った。平成17年度は13名の男子大学生を対象に、以下の3条件によるクロスオーバー実験を行った(非運動日;運動を実施しない対照日、運動日;就床3時間前に終了するように60%HRRのトレッドミル走を40分間実施する日、運動+計算日;運動日と同様の運動を行い、就床前1時間において計算問題を実施する日)。被験者は、室温23℃、相対湿度50%に維持された隔離実験室の中で、介入以外の生活行動が同じになるように規則正しい生活を送った。実験日はいずれも7:00起床、23:00就床であり、日中におけるアルコールの摂取、薬物の服用、昼寝は禁止した。これらのスクリーニングは活動日誌と心拍数などの生理指標により行った。実験日の測定項目は以下のとおりであった。まず心拍数とHFパワー値、LFパワー値、LF/HF、直腸温、皮膚温(前胸部、上腕外側、大腿前面)を24時間連続記録した。SSS(眠気の質問紙)は、起床後と就床前4時間(30分ごと)に回答させた。また夜間睡眠の評価は、終夜ポリグラフとOSA睡眠調査票(質問紙)により行った。本実験の結果はまだ解析中であるが、就床直前の計算課題によって被験者13名中9名のHFパワー値の回復が抑制された。これら9名においてOSA睡眠票の結果を比較したところ、就床前の副交感神経系活動抑制の有無に関わらず、運動日と対照日の主観的睡眠感には有意な差は認められなかった。今後は体温や眠気、睡眠ポリグラフへの影響について解析を進めるとともに、さらにサンプル数を増やす予定である。
|