筋の損傷・炎症を誘導する伸張性運動負荷、鉄人トライアスロン、暑熱環境下での持久性運動負荷の実験を行い、血液・尿サンプルの臨床生化学検査値やサイトカイン濃度の変動を解析した。その結果、一般的な臨床生化学検査項目と比較し、激運動によって抗炎症性サイトカイン(IL-1ra、IL-6、IL-10など)、熱ショック蛋白70、血清アミロイド蛋白Aが激変し、ストレスの評価指標となりうることが示された。介入研究としては、糖質と水分の摂取が運動時の炎症反応、サイトカインの変動に及ぼす影響を評価し、IL-6の反応を制御できることを示した。 国際共同研究としては、オーストラリアのEdith Cowan University、Queensland University、Australian Institute of Sportと上記の運動関係の研究が軌道に乗り、今後も共同研究を進めていくこととなった。また韓国啓明大学とも、寒冷環境下での持久性運動時の免疫変動の実験を行い、サンプルを解析しつつある。デンマークのRibe Country Hospitalとは高齢者の運動に対するアミノ酸摂取の介入研究を行い、炎症反応を解析していくこととなった。 以上の研究成果は、国際運動免疫学会にて発表し、論文は現在European Journal of Applied Physiologyに審査中である。また、国際スポーツ医学会、ヨーロッパスポーツ科学会で発表するため登録済みである。 一方、運動による筋損傷と炎症に関して、先行研究の知見を文献的に整理したが、血中のサイトカインの関与は少なく、むしろ白血球の産生する活性酸素の関与の重要性が示唆され、その方向で今後の研究を進める必要性が考えられた。
|