前年度に引き続き、免疫能、炎症、老化に関する機序の解析と運動・栄養による予防医学的介入研究を進めた。前年度は極端な激運動について検討を行ったが、本年度は運動処方を念頭に置いた健康増進運動についても検討を進めた。健常若年者を対象とした歩行運動の介入研究(1日30分、週6日、3週間)では、トレーニングによって白血球・リンパ球サブセット、NK細胞活性、Tリンパ球幼弱化反応に有意な変化は認められなかったが、血漿インターロイキン12p40濃度に有意な減少が認められ、細胞性免疫が活性化されやすい状態になる可能性が示唆された。高齢者を対象とした12週間の低強度筋力トレーニングでは、CRP、SSA、HSP70に有意な低下が認められ、筋肥厚とCRP、TNF-αの変化率に逆相関が認められたことから炎症の軽減が筋肥大にも関わる可能性が示唆された。前立腺癌がん患者を対象とした筋力トレーニングの介入研究では、インスリン濃度が低下した以外にはホルモン、サイトカインに顕著な影響は認められなかったものの、筋力改善によるADLの改善効果が示され、運動トレーニングががん患者においても有用であることを示した。なお、運動・トレーニングの影響を評価するためのバイオマーカーの検索も試みたが、現状では実用化に値するような研究結果を得ることはできなかっだ。今後も引き続き研究を行う予定である。
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