研究課題
海水中のコロイド態微量金属元素を溶存態画分から分離するため、中空糸膜を用いたクリーン濾過法を開発した。孔径0.02μmのポリエチレン製中空糸膜カートリッジを作製し、外部から汚染を受けない濾過法を検討した。中空糸膜カートリッジを0.1Mの高純度塩酸で洗浄することにより、外洋表層水中の微量鉄を測定できる程度(0.1nM以下)までブランク値を下げることが可能となった。来年度以降、本法を用いて海水中のコロイド態、溶存態の微量金属元素を分離し、海洋における生物地球化学的挙動を調べる。また、セルベス海、スールー海、フィリピン海における海水中の粒子態、溶存態(0.2μm以下)の鉄、マンガンの分布及び海底堆積物間隙水中の鉄、マンガンの分布を調べた。これらの結果を併せて、西部北太平洋縁辺海域における鉄、マンガンの地球化学的挙動を検討した。まず、フィリピン海にはフィリピン諸島沿岸堆積物から供給されたと考えられる粒子状の鉄、マンガンが多く存在することが明らかになった。セルベス海においては、海底堆積物の初期続成過程により溶出した溶存態のマンガンが深層へ多量に供給されていた。この間隙水からの供給が、セルベス海の溶存態マンガンの分布を支配していると考えられた。一方、セルベス海と同じ半閉鎖系海域であるスールー海では、むしろ海底斜面を流れるタービダイトが起源と考えられる粒子状の鉄、マンガンが多く観測された。半閉鎖系海域において、鉄、マンガンをはじめとする微量金属元素は周辺の沿岸域や海底堆積物からの影響を受けやすく、その相互作用によって粒子態、溶存態の分布が大きく変化することが明らかになった
すべて 2005
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Geochimica et Cosmochimica Acta (supplement) 69・10
ページ: A873
Biogeochemical cycling and its impact on the global climate change (Extended Abstract of Sixth IOC/WESTPAC International Scientific Symposium)
ページ: 9-14