研究課題
本年度は平成17年度に確立した中空糸膜による海水中微量金属元素のサイズ分画法を用いて実試料の濾過を行った。海水試料は、東京大学海洋研究所国際沿岸海洋研究センター所有の研究船「弥生」を用いて、岩手県大槌湾で採取した。また、大槌湾流入河川においても河川水試料を採取した。中空糸膜によるサイズ分画法を用いて、粒子態・コロイド態面分を除いた海水を分取し、この海水中の希土類元素を汚染なく定量することに成功した。比較的粒子濃度の高い試料についても目詰まりのない迅速なサイズ分画が可能となった。また本年度は、溶存態微量金属元素の半閉鎖系海城での除去過程を調べるため、スールー海におけるトリウム-230とトリウム-232の地球化学的挙動について検討を行った。海水中のトリウム-232濃度から、陸起源トリウム-230濃度を推定し、海水起源トリウム-230のスールー海における分布を明らかにした。可逆的除去モデルから予想されるトリウム-230濃度に比べて、スールー海深層における海水起源トリウム-230は低濃度であった。この分布から求められるスールー海深層でのトリウム-230の平均滞留時間は13年程度であり、外洋城に比べて非常に短い。このことは、スールー海において特異的な除去過程が存在することを示している。スールー海の海盆斜面では乱泥流が頻繁に発生することが知られている。この乱泥流によって巻き上げられ再懸濁した堆積物起源粒子が、海水中のトリウム-230の除去を強めていると考えられる。半閉鎖系海域においては、溶存態微量金属元素の挙動を考える上で、このようなボトムスキャベンジング効果を考慮する必要がある。
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