研究概要 |
人工湿地による内分泌撹乱化学物質の除去における機構を明らかにするために,ヨシ植栽の有無,湿地における水面が地上のものと地下のもの(水面が地上にあると藻類が発生するため藻類の有無の比較となる),太陽光の入射の制限の有無,植栽基盤深さの大小の組み合わせにより,合計6系列の人工湿地を作成した.人工湿地は砂基盤で構成される0.18m^2のベンチスケールの湿地であり,それぞれ下水二次処理水が間欠的に等量流入する仕組みを施し,約1年間継続して実際の下水二次処理水を流入させている.そして,これら6系列のベンチスケールの人工湿地からの流出水中に残存するエストロゲン活性を酵母Two-Hybrid法により評価した.その結果,水面が地下にある場合には,植栽基盤が浅い人工湿地でよりエストロゲン活性が低減化されることが明らかとなった.一方,水面が地上にある場合では,太陽光の入射を制限して藻類の発生を抑制した系においてエストロゲン活性が高く残存する傾向が得られた.また植栽がない場合では,太陽光の入射の制限がなければ,水面の位置が地上であっても地下であってもエストロゲンの低減化は可能であった.これらの結果から,植栽由来の有機物の供給がないことや基盤が浅いことからより好気的な環境であったと考えられる湿地基盤において,エストロゲン活性の低減化がより期待できることが示された.さらに昨年度の成果との関連により,湿地に発生する藻類による吸着現象によるエストロゲンの低減化が実際の湿地でも起きることが明らかとなった.これらの現象が把握できたことにより,次年度は人工湿地におけるエストロゲン活性の低減化の定量化により,その性能の評価を行う予定である.
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