本研究では、銅を中心としたダイオキシン類の生成機構を解明し、その結果を抑制技術に利用するために、時間分解能を高めたin situ XAFS分析(時分割XAFS)などにより詳細な銅の化学形態変化を追究することを第一の目的としている。昇温過程での変化がわかれば、この酸化還元反応がどの温度から開始するのかがわかり、実際の焼却施設における温度管理等に極めて有益な情報を与える。時分割XAFS実験からは、塩化銅を用いた模擬飛灰において、210℃から塩化銅の触媒作用によるダイオキシン類生成が始まることがわかった。260℃で最も強く還元されたが、その後は炭素消費により、還元状態から酸化状態へと移行し、300℃以降では銅の価数変化は進行しなかった。時分割XAFSは従来型のステップスキ・ヤンのXAFSに比べスペクトル分解能は高くないが、ほぼ同じ現象を把握することができ、また反応開始温度について正確な値を求めることができた。 次に、ダイオキシン類の生成抑制作用をもつことで知られているNaOHを添加して300℃で加熱実験を行い、その抑制効果が経時的にどのように現れるかを調べる目的で、VUV-TOFMS実験を行った。上記と同様塩化銅を用いた模擬飛灰を実験に用いた。NaOH添加の場合、モノクロロベンゼンが加熱開始前のベースとなる量の2倍である300ppb生成したものの、ジクロロ、トリクロロベンゼンはほとんど生成しなかった。NaOHを添加すると、120min加熱しても全ての時間でクロロベンゼン類はほとんど生成されずに、平行な直線グラフのようなグラフ形状を示したことから、ダイオキシン類も抑制されると考えられた。今後、NaOHを添加し、加熱した時の銅の挙動をおうことで抑制機構の解明につながると考えられる。
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