研究概要 |
独自の設計に基づいて作成した二段階集光マイクロビームシステムをPFBL-16BおよびSPring-8 BL23SUにおいてテストし,ほぼ設計どおりのサイズ(3-5μm)のビームが得られることを確認した。しかしながら,試料の汚染と検出器の不調,および,最終ミラーからの電子が検出器に入ってしまうという問題から,最終的に三次元測定を行うには至らなかった。これに対し,試料についてはより汚染に鈍感なものを作製することに成功した。また,検出器は修理を行い,さらに,ミラーに覆いをつけることで電子が検出器に入らないように改造を行った。したがって,次年度には問題なく実験が行える。 一方,試料に関しては,深さ分解XMCD方を用いて,数多くの予備的な実験を行った。得られた結果のうち主なものは以下の通りである。 1.Ru/Co/Ru(0001)薄膜におけるスピン再配列転移 Ru蒸着によってCo最表面の面内方向の軌道磁気モーメントが減少することを明らかにした。 2.Fe/Ni/Cu(001)薄膜におけるスピン再配列転移 Feの蒸着量に応じて面内→面直→面内と磁化容易軸が変化し,しかもその過程単純な往復ではなく,何からせん状の挙動を示すことが示唆された。 3.Fe/Cu(001)薄膜への分子吸着に伴うスピン再配列転移 CO吸着によって3,4MLのFe薄膜は面直から面内磁化へと転移するが,2MLの場合には面直磁化のままであること,さらに前者の場合には表面の磁気モーメントが大幅に減少するのに対して,後者ではほとんど変化しないことを明らかにした。 これらの試料では,どれもスピン再配列転移が観測されたが,その転移の様子はそれぞれに異なっており,三次元測定を行うことで,その機構が明らかになると期待される。
|