研究概要 |
本研究の目的は,光の周波数領域で負屈折率物質を創製することである.このような物質は自然界には存在しないので,人工的に作り出さなければならない.そこで,ベースとなる物質の中にマイクロメートルサイズの金属製コイルを3次元的に多数つくり込み,その物質を光に対して応答させるというメカニズムを考案した.そしてこの手法の有効性の検証と3次元金属微細構造体を作製するための加工方法の開発を行った.研究期間を通して,本年度の研究計画に掲げた目標はほぼ達成できた.(1)まず,可視光域において負の屈折率を持つ物質を実現できることを,電磁気学に基づいて理論解析し,これを世界で初めて証明した.具体的には,リング径80nm,線幅20nmの銀でできたマイクロ共振器をアレイ状に3次元的に配列されると,赤外から近紫外までの全可視光領域をカバーする周波数帯域において,負の誘電率を実現できることを確認した.(2)3次元金属微細構造体の作製方法の開発では,フェムト秒チタンサファイアレーザーを用いた多光子光還元を用いる手法を開発し,サブミクロンオーダーの金属体を直接レーザーによって作製できることを実験によって実証した.この手法で作成できる微細金属体の導電率は,バルク金属の導電率と比較して高々3倍程度であり,充分な電気伝導性をもった微細金属構造を作成できることを実験的に実証した.(3)これ以外にも,紫外線硬化性ポリマーを多光子重合させて作製した3次元ポリマー構造体の表面に,選択的に金属をコーティングする手法なども独自に開発した.
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