研究概要 |
本研究では、表面や裏面が修飾された個別の単層カーボンナノチューブの表面構造、電子状態、化学的性質などを原子スケールで直接観測することを目的とする。この計測により単層カーボンナノチューブの界面物性と電気伝導特性や電子状態との相関についてまだ観測されたことのない直接的な情報を得ることを進めている。本年度は、単層カーボンナノチューブを、溶媒に分散させずに超高真空チャンバー内で直接金属基板上に固定させる新しい方法を開発した。このことにより、多様な金属表面と単層カーボンナノチューブ間の電子移動の違いに関する研究を行った。 1.単層カーボンナノチューブの表面固定における新しい手法の開発 カーボンナノチューブは太い束(バンドル)を形成しており、孤立したナノチューブを金属基板の固定化することは簡単ではない。本研究では超高真空チャンバー内で、金属単結晶基板の清浄表面を維持しながら孤立SWCNTを固定させるために、SWCNT粉末を直接基板表面に接触させて付着させる方法を開発した。 2.単層カーボンナノチューブのSTM/STS観察 Au(111),Ag(100),Cu(111),Cu(100)などのさまざまな金属表面に固定させたSWCNTについて、走査トンネル顕微鏡/分光法(STMISTS)を用いた局所電子状態観察を行った。 3.単層カーボンナノチューブと有機分子との相互作用の観察 金属単結晶表面上で共吸着させたSWCNTと安息香酸などの有機分子との相互作用について、STMを用いた単一分子振動分光法(IETS)および走査トンネルス分光法(STS)による研究を行った。
|