1、バイオフィルム形成に必要な転写因子の同定。枯草菌のもつ約280の転写因子について野性型枯草菌ATCC6051株をもちいて変異株を作製した。作製した変異株について、ペリクルの形成能およびswarming能について調べた結果、どちらか一方または両方に影響が見られる変異株が28見つかった。 2、鞭毛形成の役割。swarmingに欠損の見られた変異株では、abrB変異株をのぞきペリクル形成の遅延が見られた。そこで、鞭毛形成・機能に関わるmotA遺伝子などの変異株を作製したところ、これらの変異株でもペリクル形成の遅延が見られた。さらにmotAabrB二重変異株を作製し、ペリクル形成能を調べた結果、motAabrB変異株では、ペリクル形成の遅延が見られないことが分かった。以上の結果、鞭毛欠損によるペリクル形成の遅延は、構造体としての鞭毛が必要なわけではなく、鞭毛形成が何らかの調節因子として機能している可能性が示唆された。 3、DegS/U二成分制御系の解析。degU変異株では鞭毛形成とペリクル形成の両方に欠損が見られるが、どのようにして2つの異なる細胞機能が制御されるのかを探った。まず、DNAアレーをもちいてdegUレギュロンを同定し、それらの変異株解析から鞭毛形成・ペリクル形成に必要な遺伝子を同定した。DegUは、センサー蛋白質DegSによりリン酸化され活性化されるが、DegUのリン酸化は鞭毛形成・ペリクル形成の両方に必須であった。また、degQ欠損株では鞭毛形成は正常だがペリクル形成に異常が見られ、in vitroの実験からDegQはDegSからDegUへのリン酸基の転移を調節していることが分かった。以上の結果、異なる時期に発現する鞭毛形成遺伝子群とペリクル形成遺伝子群は細胞中のリン酸化型DegUの量の調節によりその発現時期が決定されていることが示唆された。
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