研究概要 |
タンパク質の翻訳後修飾はタンパク質の活性調節や分解の制御など、タンパク質が機能する上で非常に重要な役割を果たしている。また、リン酸化に代表されるように、一部の翻訳後修飾は細胞内シグナル伝達においても極めて重要である。しかし、これらの修飾が細胞内のどの程度のタンパク質に及び、どのように機能しているかについてはまだ不明な点が多い。これまでにもプロテオームレベルでタンパク質の翻訳後修飾を調べた例は存在するが、それらは全てある一つの修飾に限定して調べることが限界であった。そこで、これを大幅に拡張し、複数の翻訳後修飾について同時に解析すると共に、各修飾間の関係についても調べることができる系の構築を行った。本年度はoRFの3'末端にFLAGおよびHis_6タグを融合した分裂酵母の約5,000の遺伝子を個別に発現する株を元に、昨年度までに確立したHis_6タグを利用して各タンパク質をハイスループットに精製する系を改変し、より効率的にタンパク質が精製できる系を構築した。パイロット実験として全タンパク質の約1割に当たるタンパク質を確立した方法を用いて精製し、プロテインマクロアレイを作製して、いくつかの翻訳後修飾特異的な抗体で検出を行ったところ、同じ精製産物に対して複数の修飾が同時に検出できることを確認できた。これを残りの全てのタンパク質に適用すれば、これまでは不可能だった複数の翻訳後修飾について同時かっ網羅的な解析が可能になるだけでなく、各翻訳後修飾間の関係についてのグローバルな解析が可能になると期待される。
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