本研究では、民主化プロセスの只中にあるアフリカ諸国において、教育が市民意識の醸成、エスニシティや文化的背景の違う人々との共生、間接民主制への投票を通じた参加の方法、などに対してどのような役割を果たしているかを調査している。 2年目である平成18年度は、前の準備段階でレビューした政策文書や文献により構築した枠組みを基礎とし、実際に教育現場で市民教育がどのように行われているかを調査した。調査対象国(ケニア、エチオピア、ガーナ)に在住する共同研究者の協力のもと、前年度に試験し、修正を加えた調査ツールを用いて、高等学校レベルの学校現場において、市民教育がどのように行われているか、その中で「市民」というものが教師と生徒によってどのように認識、伝達され、生徒によって内部化されているかにつき、実際の調査を行った。この調査に基づき、中間的な報告書を作成するとともに、共同研究者が一堂に集まり、比較研究のための枠組み、事例国相互の共通点、相違点などについて討議した。来年度に向けて、それぞれの国における「市民意識」の内容、形成プロセスを多面的に解析し、報告書の執筆準備を行った。 市民教育の考え方は、欧米で発展したため、確立した国民国家の枠組みの中での市民の人権としての多文化共生や民主主義を基礎としているが、アフリカでは、市民教育の発想自体を考え直さなければならないと思われる場面が多々あり、今後分析を深める中で、理論的検証も行っていきたい。
|