平和構築における安全保障機能、具体的には紛争直後の治安維持から、より長期的な意味での法の支配の確立までを、欧州とアフリカの事例に焦点をあてつつ、昨年度から引き続き研究を行った。武力紛争が停止したかのように見えても、一般市民のレベルで感知できる治安維持が図られていなければ、平和構築は実質的には開始できない。しかし単なる治安維持では長期的な平和構築には足りず、法の支配関連の国内組織の整備などを通じて、安定的な社会秩序の基盤が形成されていかなければならならない。短期的な治安維持と、長期的な法の支配の確立は、最大限に円滑に結び付けられて、追求されなければならない。地域と活動内容および活動組織でいうならば、ボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボ、アフガニスタン、シエラレオネなどにおいて、DDR、治安部門改革(SSR)(軍事部門改革、法執行部門改革)、司法部門改革などが、国際社会の平和維持ミッション、国連機関、地域機関、二国間援助、NGOなどを通じて、どのように進展してきたのかを、文献を渉猟しつつ、実地調査もまじえて、研究した。ニューヨークの国連本部では「国連平和構築委員会」が設立され、関連問題が討議されてきているので、その動向を押さえることにも注意を払った。本年度は中間的成果を、国際法学会、国際政治学会、International Studies Association(ISA)などで報告し、専門家との意見交換に努めた。その成果は、学会誌やその他の媒体において、中間報告として発表し始めている。
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