研究概要 |
平成17年度に引き続き平成18年度も、「福祉国家」政策の厚生経済学的基礎理論に関わるいくつかの重要な成果を、公刊論文、公刊予定論文、もしくはDiscussion Paperという形で纏め上げ、発表する機会を得た。第一に、「福祉国家」政策の厚生経済学的基礎理論に直接関わる英語論文を2本執筆し、そのうちの一本は、Springer出版のモノグラフ・シリーズ『Choice and Welfare』より、Prasanta Pattanaik, Koichi Tadenuma, Yongsheng Xu, and Naoki Yoshihara共同編集の著作『Rational Choice and Social Welfare』にて刊行予定である。また、もう一本も、7月の立命館大学におけるVan Parijs教授(ベーシックインカムの提唱者)を招いた国際ワークショップにおいて報告され、Parijs教授との研究交流も行う事ができた。上記2本の論文は、いずれも規範理論に関する経済学的分析であるが、「福祉国家」政策の分権的遂行問題に関連する論文1本も完成させ、査読付き国際誌への掲載も決まった。第二に、「機能と潜在能力」指標を用いた協力的交渉ゲームの公理的研究に関しても、その成果を「社会的選択と厚生に関する世界大会」等の国際コンファレンス等で報告し、さらにそれらで得たコメントを下に、共同研究者であるYongsheng Xu教授のいるGeorgia State Universityを短期訪問しながら、Discussion Paperの改訂を行った。この改訂作業は来年度に引き続く予定である。また、関連する協力的交渉ゲームの公理的研究の成果が2本の論文として、査読付き国際誌への掲載も決まった。第三に、労働配分の不均等性という観点からの衡平性基準に基づいて、市場経済の資源配分機能について評価する理論研究を新たに推進させ、2本のDiscussion Paperを発行させた。この系列の研究は、現在、ロンドン大学のRoberto Veneziani講師との共同研究として、さらなる発展が平成19年度において期待される。
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