(1)市販の胃腸薬(消化薬)をベースに人工消化液を調製し、基質として「製菓用ゼラチン」を用いることで、タンパク質が消化・分解されアミノ酸が生成することを確かめる教材実験を開発することができた。タンパク質の検出方法としてビウレット法、アミノ酸の検出方法としてニンヒドリン法を用いることで、分光光度計などの分析装置が無くても、目視確認で十分呈色の変化・違いを確認することができた。また、ビウレット、ニンヒドリン法ともに、一般の生化学実験で用いられている試薬溶液でなく、より原始的・簡便な方法で十分判別可能であった。さらにゼラチンを用いると、呈色試薬を用いなくても、実験後に冷蔵するだけで消化されたことを確認することができた。 (2)市販の胃腸薬(消化薬)の中でも、ある特定の商品(ビオフェルミン健胃消化薬錠)をベースに人工消化液を調製し、基質としてオリーブオイルを用いることで、脂肪が消化・分解されて、グリセリンが生成することを確かめる教材実験を開発することができた。生成したグリセリンの検出には、銅(II)-グリセリン-ナトリウム錯体法を用いた。実験条件の設定時には遠心分離機と分光光度計を用いたが、ろ紙やろ過フィルターなど、遠心機を用いなくても目視確認で十分な結果を得ることが分かった。ただし、撹拌を人力で行うと、撹拌不足で反応が出にくいため、試験管ミキサーが必要である。 (3)北海道教育大学旭川校附属図書館に保管されている1947年以降の学習指導要領、同指導解説書、それに基づく教科書を確認したが、タンパク質・脂肪が消化酵素によって消化・分解され、アミノ酸、グリセリンが生成することを目視観察以外の実験で確認する実験教材は今までに行われていないことが分かった。また、沖縄県那覇市の小中学校の理科教員の代表へのアンケート調査でも、タンパク質と脂肪の消化・分解生成物を実験によって検出・確認する授業実践は現在までに行われていないことを確認した。
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