本研究は、空間的広がりを持った天体の観測研究に最適なX線結像光学系の開発を行うものである。既存のX線望遠鏡技術はそのような観測要請に対して遅れており、本研究ではこれまでの研究成果に立脚し、従来のX線望遠鏡に欠けていた「視野」というベクトルを伸ばし、宇宙の大規模構造の研究が行なえるX線望遠鏡の実現を目指し、研究開発を行う。 前年度までに、望遠鏡製作のための基礎技術開発(軽量基板の新規開発、放射光施設における性能評価技術の確立)を完了した。さらに、放射光を利用して硬X線望遠鏡の光学特性(有効面積、結像性能、視野)を評価し、誤差内容の定量的な分析を行った。また光学調整技術を開発し、結像の軸周り非対称性の低減に見通しを立てた。 これらの成果に基いて平成19年度においては、次のような研究成果を上げた。(1)望遠鏡鏡筒部を作成し、これを用いて硬X線望遠鏡の部分鏡を製作し、光学調整技術を用いて従来よりも高い結像性能を実現した。(2)光線追跡法数値シミュレーターを構築し、(1)の望遠鏡の放射光利用性能評価データを取り込んだシミュレーションを行い、再現性の評価と望遠鏡性能診断を行った。特に硬X線望遠鏡の視野について、誤差5%以下まで再現性を向上させることができた。(3)NASA/GSFCとの共同研究により、望遠鏡の高開口効率化を目指した一円周鏡(Full-shell mirror)を製作し、性能評価に着手した。(4)本研究の成果に基き、我が国の次期X線天文衛星NeXT搭載X線望遠鏡の基本設計を行い、特に結像性能について開発見通しを立て、衛星プロジェクト提案へ反映させた。
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