本研究ではこれまで我々が開発してきたラドン濃度測定に関する技術を応用し、キセノン中の微量なラドン濃度を高精度に測定する検出器を新たに開発することを目的とする。液体キセノンは低バックグラウンドのシンチレーション検出器として注目を集めており、神岡でも宇宙・素粒子実験分野での応用を目指して研究開発が進められている。私はキセノンとラドンの融点の差を利用しキセノンガス中のラドンをコールドトラップで濃縮する事を思いっいた。本研究では、一体型の容器を用いてラドンのコールドトラップと静電捕集を行うことにより、他の不純物の混入を極限まで抑えたラドン濃度の濃縮を行う。また、正に帯電したラドンの娘核を静電場によりPIN型フォトダイオード表面に捕集する。PIN型フォトダイオードでラドン娘核のアルファ崩壊のエネルギーを測定することにより、他の核種の崩壊によるバックグラウンドを排除する。 今年度は、静電捕集容器、真空断熱容器、冷凍機、ヒーター、及び配管系部分の構成の検討と設計を行い、最初の試作まで行った。静電捕集容器としては2種類の容器を試作した。またラドンのコールドトラップも2種類の形状の部品の試作を行った。一つは無酸素銅ブロックに細かい穴を開けたもので表面がなめらかに加工されておりバックグラウンド低減を目標とした。もう1種類は銅のワイヤーをつぶして固めたもので、表面積が比較的大きく捕集効率を高めることを目標とした。 システム全体の詳細な検討が予想以上に難航したため、年度当初に計画した研究開発項目全てを完了することはできなかった。本年度に予定していた測定器の特性試験等は来年度以後早急に行う予定である。
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