研究概要 |
本研究は新しいX〜ガンマ線検出器であるシリコンドリフト検出器(SDD)とLaBr3(Ce)シンチレータを組み合わせて、次世代高性能ガンマ線バースト検出器を構築するものであり、今年度は円環型SDD、シンチレータ単体での特性とそれらを組み合わせた基礎性能を評価した。SDDに関してはドイツKETEK社の協力を得て開発を行っている。まず検出器面積10mm2と100mm2のものを評価し、どちらも1pF以下の小さな検出器容量をもつこと、検出器雑音がリーク電流で支配されていることを明らかにした、また、温度が高いほど小さな整形時定数で最適化される。得られた分解能は-30℃、5.9keVで130eV(10mm2),280eV(100mm2)とX線CCDに劣らない非常に優れたものであった。またドリフト時間の違いから半径方向に位置情報が得られる可能性を示した。一方、LaBr3に関してはサンゴバン社の協力で開発を進めている。今年度、小型の結晶の製作が間に合わなかったため、有効原子番号が大きく、発光波長の長くSDDの量子効率と相性のよいBGOを用いることにした。BGOが従来のものと性能面で大差ないことを確認した後で、両者を組み合わせて評価を行った。SDDからのX線とBGOからのガンマ線が同時に検出でき、得られたエネルギー分解能は32keVで2.5%(SDD)、662keVで11%(BGO)であり、幅広い帯域を優れたエネルギー分解能で検出できることが分かった。BGOのSDD読み出しは世界初である。さらにプリアンプの立ち上がり時間の違いを用いて波形弁別を行い、両者の信号を区別することに成功し、我々の検出器コンセプトが正しいことを示した。得られた結果は、卒業論文や修士論文としてまとめ、物理学会で発表した。来年度は引き続き検出器パラメータの最適化を行い、多チャンネル化を進めるべくLSI開発を行ってゆく。
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