研究概要 |
本研究は、常温使用可能な高波長分解能をもつX線・ガンマ線検出器であるシリコンドリフト検出器(SDD)とLaBr3(Ce)シンチレータを組み合わせて、広い波長域、高い波長分解能、高い計数率測定を可能とする高性能検出器の開発を行うものである。最終的に実用化したものを小型衛星や気球に搭載し、ガンマ線バーストの広帯域スペクトルを高精度に取得することを目的としている。3年間の研究で2年目にあたる今年は、1)LaBr3(Ce)シンチレータとSDDを組み合わせた検出器の性能評価,2)7素子アレイ型検出器の構築および性能評価、3)8チャンネル素子読み出しLSIの開発を行ってきた。 1)はこれまでBGOシンチレータで代用していたものをLaBr3(Ce)が入手可能となったため置き換えたものであり、本来のコンセプトである。残念ながら、マウントしたSDDに劣化が見られ、エネルギー分解能は662keVで4%台にとどまった結果となった。これは光電子増倍管による読み出し結果3.2%より悪く、今後新しいSDDに変えることでさらなる性能向上を目指す。BGOに関しての結果は3つの国内学会と2つの国際会議で発表してきた。 2)は、新たに六角形の形をした7つのSDD素子を購入し、タイル状に隙間なく配列して、構築したものである。SDDの上にはBGOをマウントし、ハイブリッド検出器としている。このような検出器は世界でも類を見ない。我々は初めてこの検出器の性能を評価した。残念ながら、1素子で信号が確認できていないがあるものの、6素子からの信号を検出し、どの素子も-30度でBGO 662keVで6%台のエネルギー分解能を達成しており、優れた性能をもつことが明らかになった。現在、素子の性能評価を継続している。 3)は宇宙科学研究所池田博一教授との共同研究ですすめたもので、8チャンネル素子の信号を読み出し可能なCMOSアナログLSIを設計し、MOSISによって試作した。このLSIは、シンチレータからの信号とSDDからの信号を分別する回路を兼ね備えたもので、波形を整形し、波高のピークを維持する機能をもつ。現在、このLSIが手元に届いた段階であり、現在LSI自体の性能を試験中であり、来年度はLSIと検出器を組み合わせて読み出しを行う予定である。
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