研究概要 |
平成17年度は,イオン交換法を用いて合成した2次元正方格子磁性体(CuCl)LaNb2O7が絶対零度でも長距離磁気秩序をもたない「スピン液体」という状態が実現していることを示唆する結果を得た.平成18年度は大きくわけると次の4つの研究を行った.(1)(CuCl)LaNb2O7に対し比熱やμSRなどの物性測定実験を行うことにより,20mKにおいても磁気秩序がおこっていないことをしめした.(2)上記物質とほぼ同一の構造をもつ(CuBr)LaNb207とこれらの固溶系(CuCl1-xBrx)LaNb2O7(0<x<1)の合成に成功した.これらの固溶系では化学的には均一であるにもかかわらず磁気的には相分離を起こすことを見いだした.(3)本研究により単結晶をえることに成功した.単結晶作成のためにまずは母体であるRbLaNb2O7の単結晶作成を行った.この単結晶の報告例はないが,類似物質であるCsLaTa2O7ではフラックス法による報告例があるのでこれにならって行う.フラックスの種類,るつぼの種類,昇温速度,降温速度などのパラメータを変化させたところ,最適な条件を見つけることに成功した.得られた母体の単結晶をCuCl2と低温で反応させることによって,イオン交換が単結晶でも起こり(CuCl)LaNb2O7の1mmの単結晶を得た.単結晶であるため温度条件など厳密に決定することが重要であるため,現在,単結晶X線構造解析のほか,磁化率測定,中性子散乱実験,強磁場実験,ESR測定,NMR測定などを単結晶をもちいて行っている最中である.(4)電子顕微鏡や放射光X線測定によって,幾つかの物質には超格子が存在することを明らかにした.
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