研究概要 |
ペロブスカイト型構造やK2NiF4構造をとる様々な遷移金属酸化物(Ti,Mn,Fe,Co,Ni,Cu)のエピタキシャル薄膜をSrTiO3基板上に作製し、金電極とアルミニウム電極をつけることによって、電場誘起電気抵抗スイッチング効果を調べた。その結果、いずれの遷移金属薄膜においても、パルス電場の極性に応じて、2端子間の電気抵抗の値が不揮かつ可逆に変化することがわかった。この実験結果は、このスイッチング効果が、これまで信じられてきたような物質の特定の性質に依存するものではなく、より普遍的なメカニズムによって引き起こされることを意味する。薄膜と電極の界面付近における欠陥の状態が電場によって変化することが、原因の1つとして考えられる。 また、同様なスイッチングの現象が光学的に観測されないかを調べるために、パルス電場を加えた際の電極間の様子を光学顕微鏡で観察した。その結果、パルス電場印加によって電極間に他の部分とは「色」の異なる部分が出現し、その形状が印加パルス電場の極性の変化によって、可逆的に変化することを見出した。また、この部分の光学反射率を分光測定した結果、パルス電場印加によって出現した部分は他と比較して、より金属的であることが分かった。 こうしたパルス電場印加に伴う電子状態変化をより空間分解能を上げて測定するために、CCDカメラによって2次元顕微反射分光画像を得ることができるシステムを開発した。装置の立ち上げと性能チェックはほぼ終了したため、今後は実際の遷移金属薄膜の電子状態変化について、数μmの空間分解能で測定する予定である。
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