研究概要 |
DNAは二重らせん構造をとることで、持続長およそ50nmにも及ぶ剛直棒状高分子となるが、生体内ではグロビュール転移により持続長以下に凝縮した形で収容されている。剛直な棒を機械的に折りたたもうとすると二重らせんの解離が生じてしまうが、そこには二重鎖解離を抑制しつつうまく折りたたむメカニズムがあるのだろうか。この命題に対して、「ブロック共重合体が誘起するDNAの規則的断片化」が、凝縮によるクルシフォーム構造の誘起によって説明可能であるということ、クルシフォームを中心にヘアピンフォールドする」(Shlyakhtenko,L.S. et al.(1998)J.Mol.Biol.,280,61)ことからクルシフォーム転移は二重らせんの解離を最小限(ループ部のみ)に押さえつつ剛直な棒が折りたたむためにDNAがあらかじめ塩基配列中に備えた機能なのではないかという着想に至った。本研究は高分子ミセルを使うことで一つの凝縮したDNAを取り出すことのできる実験系を構築しており、これまで明らかとなっていない単分子レベルでの凝縮プロセスを明らかに出来るものである。仮説を立証するために、i)規則的断片に対し、制限酵素反応を組み合わせることで切断箇所がクルシフォームであることを決定する。ii)異なるチャージ比で調整したDNAコンプレックスに対し、S1ヌクレアーゼによる断片化様式の同定およびAFM観察を行うことで折りたたみ方とマクロスコピックな凝縮形態との関係を明らかとする。iii)DNAの凝縮度による遺伝子発現効率評価を無細胞系で行うことで折りたたみ構造形成の生理学的意義の本質に迫る。以上のアプローチにより、凝縮構造と二重らせんの解離との相関からDNAの折りたたみの仕組みを解明しようとするものである。
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