化学反応を促進する固体触媒の触媒作用を外部信号によって"in-situ"で制御することは極めて興味深い課題である。これまでに、強誘電体単結晶に高周波電力を印加することにより発生できる共鳴振動が、その結晶表面に接合した金属薄膜の触媒活性や反応選択性を顕著に変化させる効果を持つことを報告してきた。本研究では、さらに共鳴振動効果を拡張し、高度な機能を持つ固体触媒の開発を目的として(1)印加電力による精緻な反応選択性の制御、および(2)窒化物薄膜に及ぼす共鳴振動効果について検討した。(1)の検討において、特定の印加電力の共鳴振動がPt薄膜上のメタノール酸化反応に対する部分酸化作用を顕著に促進する効果を持つことを明らかにし、共鳴振動を発生させる印加電力を変化させることにより、反応選択性を任意にコントロールできること、および新規な触媒機能を発現させることが可能であることを示した。(2)において、高いポテンシャルを持つ窒化ガリウム(GaN)を触媒自身あるいは触媒担持として用いるために、ヘリコン波励起RFスパッタ法によるGaN薄膜作製の条件について調べた。高周波印加電極としてMoを強誘電体結晶上に取り付け、さらにその上にGaNを種々の反応ガスおよび高周波電力条件下で取り付けた。GaN上のエチレン酸化反応やエタノール分解反応において、共鳴振動は触媒活性を増加させる効果を持つが、これまでの非窒化物触媒に比べて顕著な効果は得られなかった。このことは、作製したGaNの結晶性が悪いことに起因すると考えられ、さらにスパッタ条件(窒素導入圧力、高周波電力および基板温度)の検討が必要であることがわかった。高い結晶性のGaN薄膜の作製および、その上PtやPdなどの金属を分散させることにより、顕著な共鳴振動効果が期待できるものと考えられる。
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