本研究は"光応答性部位を持つアキラルなアモルファス高分子材料の薄膜において分子のらせん状3次元配列が光誘起される新現象について探求すること"、ならびに、"その光学的応用を検討すること"を目的としている。 本年度は、まず"配向と構造化を記述する詳細モデル"の確立を掲げ、光学異方性分子の配向と構造化に由来する伝播光の状態変化を定式化する詳細モデルの確立を図った。その結果、光誘起キラリティ材料ならではの光アドレス型変調制御機能を理論的に予測し、デバイス応用に役立てることが可能になった。その結果を踏まえて、情報セキュリティ用途への新しい応用を検討し、1件の特許出願を行った。その他、光学機能を視野角補正板や特殊回折格子の考案と提案を行った。(ただし、代表研究者の退職により研究が最終年度途中にて中止せざるを得なくなったため、本研究提案にて予定していた光アドレス型新規光学デバイスの提案・実証の一部は完了しなかった。)考案した新規光学素子については、今後、特許取得や論文発表を行ってゆく予定である。 理論的な検討に加えて、光学異方性分子の配向と構造化において、分子のn-π*遷移が非常に重要な鍵を握っていることが明らかとなった。n-π*遷移とπ-π*遷移を励起する2波長同時励起法による実験を行ったところ、2つの遷移を励起するレーザー強度のバランスが重要であることが分かり、その最適化の結果、約30%の光誘起光学回転の応答速度改善など、開発した材料のパフォーマンスを最大限に引き出すための新しい方法が見出された。その他、水素結合と液晶性を組み合わせた超分子群が極めて大きな光誘起複屈折性を発現することが明らかにし、高性能新規材料の創出に向けた手がかりを得た。今後、特許取得・論文発表を予定している。 これらの結果は、2報の国際誌、1報の国内誌、1件の特許出願(国内)として発信した。
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