アミノオキシル基を側鎖に持つポリマーを原子移動型リビングラジカル重合で合成した。重合時の溶媒や温度などの条件検討を行い、最適な条件の確定を行った。次に、これまでに報告されている手法を用いて、ガラス基板上に重合開始点となるハロゲン化合物を提示させた。そこを基点としてアミノオキシ基をもつモノマーをブラシ状に重合させ、糖鎖捕捉フィルムを作製した。反応が進んだことはXPS及びIR-RASなどの表面分析法を用いて確認した。アミノオキシル基を提示した基板を糖鎖水溶液中に浸漬し、糖鎖を固定化した。基板上に糖鎖が固定化されていることを確かめるため、糖鎖を認識する蛍光レクチンを用いた。蛍光顕微鏡観察の結果、糖鎖を固定化した部分にのみ蛍光レクチン由来の明瞭な蛍光が観察され、糖鎖固定化が行われていることを確認できた。糖鎖特異的細胞接着性の評価を行うために、糖鎖としてラクトースやセロビオースなどの二糖を固定化した基板を作製した。そこに、ヒト線維芽細胞を播種し、1時間後と24時間後の細胞の接着性並びに細胞の基板への伸展性の評価を行った。細胞播種後1時間の基板ではそれぞれの基板上で細胞接着性に大きな差は観察されなかったが、24時間後では任意の差が観察された。糖鎖を固定化していないコントロールの基板上の細胞は大半が死滅していたが、糖鎖を結合した基板上では、良好な伸展が観察された。また、糖鎖間での違いを観察したところ、ラクトースを固定化した基板上では、セロビオースを固定化した基板より細胞接着並びに伸展に良好な結果が得られた。今後は、より多種類(高分子量、電荷を持つ)の糖鎖を基板に固定化し、細胞特異性を明らかにしていく予定である。
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