研究課題
本年度は金属イオン伝導体の新規な利用法を開拓するために、固体電気化学反応を用いた金属板の微細加工法を検討した。金属板として一価金属イオンを発生する銀および銅、あるいは二価金属イオンを発生する亜鉛および鉛を使用した。また、金属イオン伝導体としてこれら4種類の金属イオンを伝導可能なベータアルミナセラミックスを用いた。金属板とベータアルミナの微小界面に金属側を陽極として金属の融点以下の250〜600℃で電圧を印加した。金属板は固体電気化学的に酸化され金属イオンとしてベータアルミナ中へと拡散し、結果的に金属板が消耗した。このとき、固相接触を数マイクロメートル径の微小界面に制限することで、金属板は局所的に消費されて微細加工が進行した。加工終了後のベータアルミナ内の元素分析およびエックス線回折分析から、電圧印加により実際に目的の金属種がベータアルミナ内へと移動していることが確認された。銀や銅は容易に加工を行うことが可能であったが、低融点の亜鉛や鉛では低温操作を要するためにベータアルミナのイオン伝導率が低く、効率的な加工が困難であることが分かった。あらかじめベータアルミナに表面に目的形状を有する凹凸を加工しておき、これを金属板に接触させて固体電気化学反応を行った。これによりベータアルミナ表面の凹凸形状が金属板表面に正確に転写されることがわかった。従って、溶液中の電気化学反応を利用した微細加工法では必須であったマスキング処理なしでパターン形状を金属板表面に直接描画可能であることが分かった。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (2件)
Chemistry of Materials Vol.17, No.8
ページ: 1930-1932
Solid State Ionics Vol.176, No.1-2
ページ: 1073-1078