研究概要 |
本年度はイオン伝導体として固体高分子型電解質を用いた金属表面の微細加工に取り組んだ。固体高分子型電解質で被覆した金属針微小電極を利用することで、微細加工の高精度化を試みた。固体高分子型電解質はプロトンばかりではなく、多くの種類の金属イオンを伝導することが可能であり、前年度までに使用したベータアルミナと同様に様々な金属板の微細加工に適用できると考えられる。 電解質で被覆した金属針微小電極と対象となる金属板を接触させ、電圧を印加すると、Ag,Cu,Zn,Mg,Feの表面が局所的に溶解し、微細加工が実現できることが明らかとなった。また、サブミクロンスケールの凹凸を形成することが可能となり、加工精度の向上を確認した。しかしながら、Al,Tiでは接触部での酸化物皮膜の成長のみが進行して微細加工は困難であった。ベータアルミナは高温でのみ良イオン伝導性を示し、反応場を高温状態に保持しなければならない。一方、固体高分子型電解質は室温においても高いイオン伝導性を有しているため、室温近傍の穏和な条件下で固体電気化学微細加工を行うことができた。 また、固体電解質として酸化物イオン伝導体を使用し、酸化反応によって消耗する材料の固体電気化学微細加工についても検討した。対象材料として酸化反応によってグラッシーカーボンを用いた。不活性雰囲気中で酸化物イオン伝導体とグラッシーカーボンの微小接触部に電圧を印加すると、グラッシーカーボンが局所的に酸化消失して、固体電気化学微細加工が可能であることが分かった。
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