研究課題
本年度は、「新規機能性分子材料の粉末回折からの電子密度レベルでの精密構造決定」のための実験室系超高分解能粉末回折装置を設計し、納入した。この装置の性能目標は、世界最高性能の放射光施設SPring-8を用いた実験で用いる試料の評価・実験条件の最適化を可能とすることである。この装置は、既存の回転対陰極型X線回折装置に組み合わせる、光学系と回折系からなる。光学系は、多層膜ミラーとチャンネルカットモノクロメータの組み合わせである。回折系は半径286.5mmのIPカメラを2θ軸に備えている。X線源はMoKα線のラインフォーカス光源であるため、Moラインフォーカス用の多層膜ミラーを新規に開発した。これは世界でも一号機である。波長の短いMo光源のため、チャンネルカット結晶を透過するX線のために2つのダイレクトビームが存在する問題も見られたが、治具作成などでこの問題を回避し、デーが測定できる状態となった。この装置を用いて、標準試料NIST CeO_2,LaB_6について粉末回折データを測定したところ、SPring-8で使用する直径0.1mm、長さ3mmのμgオーダーの粉末試料から、構造解析をするのに十分なデータが1時間程度で得られることが判明した。この性能は、ほぼ設計値どおりであった。更に分解能をしめす回折線幅もSPring-8の1.1倍程度であり、実験室粉末回折装置としては、強度・分解能の総合性能として世界的にみて最高の性能を持つことがわかった。そこで、SPring-8でしかデータを得ることが出来ない新規機能性分子材料、金属内包フラーレン、金属錯体、カーボンナノチューブについてデータ測定を行った。その結果、従来の汎用実験室X線装置では、試料が微量のためピークすら得られなかったこれらの物質についても回折データが得られることが判明した。現在、さらなる強度の向上を目指して、スリット系などの再設計を進めている。
すべて 2006 2005
すべて 雑誌論文 (5件) 産業財産権 (1件)
ChemPhysChem 7
ページ: 345-348
Angew.Chem.Int.Ed. 44
ページ: 4568-4571
Phys.Rev.B 71
ページ: 114107
日本結晶学会誌 47
ページ: 204-210
豊田研究報告 58
ページ: 167-172