研究課題
昨年度に納入された、「新規機能性分子材料の粉末回折からの電子密度レベルでの精密構造決定」のための実験室系超高分解能粉末回折装置の立ち上げ、及び高度化を進めた。また、装置を利用して当初の目的であった、放射光でしか測定できないμグラムオーダーの新規機能性分子材料の解説パターンの測定も行い、SPring-8での実験の効率化することに成功した。装置立ち上げについては、強度向上、S/N比の向上のため、スリット系を改良した。納入時に2箇所にあったスリットを3ケ所にした。また、幾何学的な検討から、各スリットサイズの最適を求め、全ての場所に設置するスリットを再設計した。これにより、強度が納入時の3倍以上となった。また、低角領域(回折角で10゜以下)の空気散乱が1/10に減少し、S/Nが飛躍的に高まった。これらによって、μグラムオーダーの試料から、1〜10時間の現実的な時間でデータが測定できるようになった。装置の高度化として、90K〜1000Kの低温・高温実験が可能なシステムを設計し、納入した。現在温度変化のオンライン化等を進めている。装置を用いて、新規機能性分子材料の構造研究の効率も飛躍的に高まってきた。金属内包フラーレンについて、この装置を用いた、回折データ測定に基づく結晶化条件の最適化を行うことにより、SPring-8での実験効率が飛躍的に向上し、複数の金属内包フラーレンのこれまでにない高品質な解説データからの構造解明に成功した。この結果は2報の論文で発表した。装置のS/Nの向上により、放射光でしかほとんど測定できないカーボボンナノチューブの直径、吸着分子量などの評価が可能なこともわかってきた。ポリイン分子を内包したと考えられるチューブについて、その内包の有無を明らかにすることにも成功した。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (3件)
Chemical Physics Letters 433
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