研究概要 |
電子の電荷とスピン両方の性質を同時に取り入れて、新機能素子の実現を図るスピントロニクス技術が大きく注目されている。強磁性を示す半導体物質はスピントロニクス分野のキーマテリアルであると目されている。本研究は、研究代表者が初めて合成に成功した強磁性半導体新材料である(Zn,Cr)Teを用いたスピン依存伝導素子を作製し、その動作を実証することを目的とする。具体的には、トンネル磁気抵抗素子およびその半導体的(絶縁体的)な性質を利用したスピンフィルター磁気抵抗素子の実現に挑戦する。 本年度は、(Zn,Cr)Teをベースとするスピンフィルター素子開発のための基礎として、1)金属/絶縁体/半導体構造から成るFe/ZnTe/InAsトンネルダイオードの作製と伝導過程の研究、2)高Cr濃度(Zn,Cr)Te単結晶成長技術の確立に取り組んだ。まず、1)の素子の伝導メカニズムはトンネル伝導が支配的であることをトンネル分光の手法により、明らかにした。また、ZnTeと格子ミスマッチの小さなIII-V族半導体InAs基板を用いることにより、Cr濃度20%までの単結晶(Zn,Cr)Teの作製に成功した。この結果より、スピンフィルター素子の電極材料として一般の強磁性金属であるFeと半導体InAsが有望であること示した。以上の結果は、応用物理学会にて発表した。なお、下記の発表論文は平成17年度における本プロジェクトの研究成果である。
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