研究概要 |
強磁場中偏極準安定原子散乱装置の開発が本研究の目的であるが、本年度は以下の3点に関する技術開発、予備実験を行った。 (1)強磁場中で動作可能なHe^*スピンフリッパーの開発 試料磁化方向に対し、He^*スピンを平行、反平行と極性反転させるのに本素子は必要である。地磁気下で動作するnon-adiabatic typeのspin flipper(山内他、応用物理74(2005)1345)の開発にすでに成功しているので、磁気シールドを強化すれば超伝導マグネットからの漏洩磁界下でも同じ原理のフリッパーを利用できるとの見通しの下、磁場シミュレーションを用いて磁気シールドを設計した。軟鉄円筒(15mmt)+二重パーマロイからなる磁気シールドを製作し、シールド内にヘルムホルツコイルを内蔵させてスピンフリッパーを構成した。本フリッパーにより、試料位置に±5T磁場印可時に効率よくHe^*スピンを反転できることを確認した。(倉橋他、2007年応用物理学会、28a-P3-22) (2)強磁場発生装置と組み合わせる超高真空容器の設計製作 超伝導マグネットの150mmφ貫通ボア内にパイプを挿入し、マニピュレータにより試料をボア中心に搬送できる構造とし、Stern-Gerlachの実験、試料の1000K程度の加熱、スパッタリング等の前処理が出来る構造にした。排気速度800l/sのターボ分子ポンプ、サブリメーションポンプ、非蒸発ゲッターポンプにより排気し、分析室にて1.2x10^<-8>Pa以下の真空度を達成した。また試料の前処理、搬送も正常に行えることを確認した。 (3)既存の0.2T電磁石による予備実験 10nm程度のナノ粒子が強磁性を示すことがPdに対し報告されている。微粒子表面に強磁性が起因するか否かの検証を行うため、Pd(100)バルク単結晶表面を用い、既存の最大磁場0.2Tの電磁石と偏極He^*ビームによる表面磁性計測を行った。磁場0.2Tにおいて測定されたスピン非対称率はFeの1/100以下であることが解った(J.Mag.Mag.Mater.310(2007)2180)。また二次電子が磁気履歴曲線に与える影響についても検討した。(Surf.Sci.,601(2007),1371-1376)
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