研究概要 |
異なる光源から出力される異なる波長のパルスをコヒーレントに合成してアト秒パルス列を発生、計測するための要素技術を研究開発した。まず異なる波長のフェムト秒パルスをチタンサファイアレーザーとクロムフォルステライトレーザーで発生させそのパルスタイミングを100アト秒レベルにし、これらの光位相を長時間高安定に制御する実験を行った。この研究は我々と米国NIST、MITでそれぞれ行われているが、これまでこの2色のパルスのコヒーレンス時間はいずれも1ms以下であったのに対し、今回は「レーザーを小型化し周りの環境から断絶する」、「フィードバック回路等の性能を向上する」の2点の改良により1時間以上のコヒーレンス時間を達成した。さらに、光位相を長時間の間0.43radの精度で合成することができた。これにより長時間合成パルスを測定することができるようになる。これはOptics Letters Vol.30, No.18, p2496-2498に掲載された。また、この成果に基づき国際会議CLEO2005において、招待講演を行った。つぎに、フーリエ合成したときに発生が期待されるサブフェムト秒パルスを従来行われている自己相関法で計測するために必要な技術の研究を行った。通常超短パルスの自己相関測定には第二高調波発生が使われるがサブフェムト秒になると第二高調波を発生させるための非線形光学結晶の厚みによりパルスが伸びてしまうという問題がある。また、超広帯域に第二高調波を発生させる必要がある。これらの問題を解決するために薄膜結晶を用いて第二高調波を発生させる実験を行った。その結果通常非線形光学結晶として用いることはないGaN,AlN,ZnOのサブミクロン厚結晶をもちいて第二高調波を発生させることができた。この結果はこれから論文にまとめるところである。また、合成パルスを計測するためには現状のパルスエネルギーでは小さすぎるため多色のフェムト秒パルスをパラメトリックアンプにて増幅することが重要となる。そのために高繰り返しの励起光源が必要となる。そこでファイバーレーザーシステムを作りOPAの励起光源として用いる予定である。そのためのYbドープファイバーレーザーシステムを構築中である。現在のところ80MHz繰り返しで7W程度のアンプシステムができている。さらに異なる波長の光位相関係を計測するための光電子および高次高調波の分光装置を設計し、立ち上げ中である。
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