研究概要 |
本研究では,レーザ光のビームモードによって照射部に生じる熱応力場を制御し,これによって脆性材料基板の割断加工の高精度化を目標としている. 本年度は,導入した半導体レーザシステムを基として,既存設備であるマシニングセンターに組み込み,複雑形状パスの割断加工に対応可能な実験装置を構成した. また,同加工法の基本的特性について調査することを主たる目的として,基本的なビームモードであるガウシアンビーム照射による加工実験を行った. 照射によって生じる熱損傷を最小限に抑え,かつ確実にき裂を進展させて割断加工により基板を切り分けるための条件について調査し,結果を国際会議投稿論文として発表した(次頁).き裂を進展させるのに必要とされる応力拡大係数を生じさせる臨界温度については,光ファイバと光電変換素子とを組み合わせた非接触式の二色温度計を用いて実験的に明らかとした.基板保持と冷却の効果を併せ持った冷凍チャックを適用することで熱損傷を起こさずに割断加工を行い基板分離が可能であることを示した.そして,パルスレーザを使用して同加工を行うことで,基板冷却機構を用いずとも基板熱損傷を抑制できることを示した. 理論的な解析では,照射部の温度とともに,き裂先端と照射点間距離が大きく応力拡大係数に影響することを示し,パルスレーザによる割断加工におけるパルス周波数,レーザ出力,レーザ走査速度,レーザパルス幅の最適条件を定める指針を明らかとした.
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