研究概要 |
ガラス基板に対して有効な割断加工であった、表層溝状き裂の板厚方向進展機構を単結晶シリコン基板に対しても適用し,その有効性について検証した. その結果,レーザエネルギーの裏面吸収による表裏温度差を起因とする亀裂進展効果は観測されず,表層溝状初期欠陥を起点とした板厚方向のき裂進展は,一定速度で走査されるレーザスポットの前後に生ずる周方向引張応力によるものであることが明らかとなった.実験に使用したレーザの波長域はシリコンに対して透過性が高いと考えられているが,表層でのエネルギー吸収による基板温度の上昇が著しい吸収率上昇を引き起こすことが同現象の原因であると考えられる. 上記の応力分希を形成して,き裂の板厚方向進展機構をシリコンウェハに適用し,加工条件の最適化のため,レーザ出力,走査速度,ビームスポット径を変化させてレーザ割断加工実験を行った.実験に供した資料は両面研磨済みのウエハ(t=0.7mm)であり,ダイヤモンドスクライバを用いて表層に溝状き裂を導入した.実験結果から,従来からシリコンウェハのダイシング(切り分け,小片化)工程に使用されているダイヤモンドブレード切断を上回る加工速度を達成可能な加工条件を見出した.この速度は,基板の水冷却をともなわないレーザ割断加工の速度としては最高のものである. また,加工品質のばらうきを抑えるとともに加工に,要するレーザ出力を抑制してレーザ照射部近傍に生じる損傷軽減するごとを目的として,ド今イェッチングによって表層溝欠陥を導入したウェハを作成し,これを資料とした割断実験を行った.加工条件を変化させた試行により,エッチングにより形成した欠陥を起点としたき裂進展・割断加工が可能であることを示した.
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