研究概要 |
平成17年度は「広域ダイナミックレンジPIV計測の実現」を目的として高い時空間解像度をもつPIV用カメラを導入し,高速気泡流の計測システムを完成させた.このシステムでは,前年度までに基本設計が完了していた被写界深度制御PIV法(SF-PIV)を,大きな時空間ダイナミックレンジを保有するシステムにバージョンアップしたものである.このシステムを利用して,チャネル乱流中の気泡を含む境界層の内層構造の計測を実施した.この結果,1mm程度の直径の気泡の壁垂直方向に励起される振動運動により,境界層内の乱流せん断応力の低下が発現することが明らかとなった.また高いせん断応力環境として高粘度のシリコンオイルを利用し,せん断変形する単一気泡のまわりの局所的な流動構造から,抵抗低減をもたらす素過程を抽出した.この結果から,Ca=0.2程度の気泡はその後流において局所レイノルズ応力が著しく低下する様子が発見された.平成18年度に実施予定の2番目の流動体系として,二重円筒間のせん断乱流(乱流テイラークエット流れ)を利用し,微小気泡の混入による乱流摩擦抵抗の増減効果の予備計測を行った.この結果,円筒レイノルズ数がRe<1000の場合で30%以上の抵抗低減,Re>3000の場合で5%の抵抗低減が確認され,その中間では抵抗低減が生じないことが明らかとなった.この結果より,気泡のせん断変形と境界層内での傾斜分布が感度の高い抵抗低減を実現する重要な要因であることが判明した.さらに,平成19年度実施予定のUVP(超音波流速分布計)とPIVの融合計測システムの開発の準備として,導入したHSVカメラシステムとUVPの同期計測システムを設計・製作した.これにより気泡およびトレーサ粒子を光と音の2つの信号で検知し,境界層内の気泡乱流の詳細な構造を明らかにするための準備が整った.
|